坊主は走る、忍者は座る


もうすぐ2016年も終わる。
「師走」とはよく言ったもので、筆者の周りでも坊主やら先生やら陰陽師やらが忙しそうに走り回っている。いつも走っている忍者としては、ここはいったん落ち着いて、コタツに入ってふるさと納税でもらったミカンでも食べながら、2016年を振り返りたい。

「今年もいろいろあったな」としみじみ思うのは毎年のことだが、今年はちょっと、予想外のことが多かった。例を挙げてみよう。

・清原覚せい剤で逮捕
・イギリスがEU離脱
・トランプがアメリカ大統領選勝利
・SMAP解散

国もジャンルもバラバラだが、ここに共通しているのは、どれも出来の悪いウソっぽい、ということだ。数年前にこの話を聞いたなら、誰もが「うそつけ」と一笑に付すことだろう。

ちなみに2年前、2014年は、佐村河内守、小保方晴子、号泣野々村議員など、ちょっと変わった一般人が話題をさらった年である。そして今年は、清原、トランプ、SMAP。えらい違いである。この2年間に何があったというのか。

誰かがタイムマシンで過去に行って、歴史を捻じ曲げてしまったような感じである。
昔「シムアース」という、地球環境をシミュレーションするという壮大なスケールのゲームをやっていて、何をどう間違ったのか、カニが文明を築き上げてしまった時のことを思い出す。そういえばトランプの顔って、どことなくカニっぽくないか。

浮足立って、師でもないのに走り回り、ファンでもないのにSMAPのベストアルバムを買ってしまいそうになるが、ここはぐっとこらえてコタツに戻り、ふるさと納税でもらったミカンを食べる。落ち着け。間違った歴史などない。お前が何も知らなかっただけだ。すべては起こるべくして起き、起こってしまったことが真実だ。もうすでに、カニは文明を持ってしまった。じたばたしても始まらない。

今年の締めくくり、紅白歌合戦の紅組トップバッターはPUFFYらしい。ヒット曲メドレーを歌うそうだが、ぜひ「渚にまつわるエトセトラ」を歌ってほしい。カニ、食べ行こう。

(論説委員:コロ田コロ夫)

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アメリカ大統領選の結果に思う


先ごろ行われたアメリカ合衆国大統領選で、ドナルド・トランプが接戦を制し、次期大統領となることが決まった。
これは大方のメディアの予想を覆す結果であり、さっそくあちこちでその分析がなされている。ヒラリー優勢が伝えられ過ぎて、支持者の投票率が低かっただとか、「隠れトランプ支持者」が多かっただとか。なるほど、と思える言説も多いが、なんだか予想が外れた言い訳というか、帳尻合わせのようにも見えなくもない。

一方で、何か月も前からトランプ勝利を予想していたジャーナリスト、木村太郎がここにきて俄然脚光を浴びているのを見ると、しまった、我々ニンジャム研究所も言うだけ言っときゃよかった、などと下衆なことを考えてしまう。

我々がトランプ勝利を予想したとして、真に受ける人はいなかっただろう。当たったら大いに威張れるし、外れても「冗談ですよー」で済ませられる。何のリスクも無かったのだ。ニンジャム所長選挙なんて、馬鹿馬鹿しい企画をやっている場合ではなかった。「アメリカ大統領選予想:トランプが勝つ!」とぶちあげるべきだったのだ。
では、なぜ我々にそれができなかったのか。

そりゃあんた、絶対にヒラリーが勝つと思ってたからだよ。あはは。
いやあ、びっくりしたのなんのって。ネットとかテレビとか、俺の見ている世界で「トランプ支持」って言ってる人、ほとんどいなかったもんね。それを鵜吞みにしてたんだけど。

俺の見てない世界って、広いなー。

あと、人は本当に思っていることをそう簡単には言わないのだということも、今回の結果から大いに学ぶべきだろう。だからこその無記名投票である。私は選挙前に「誰々を支持する」なんて、言ったことがない。

だからおそらく、「隠れトランプ支持者」ならぬ「隠れニンジャムファン」も相当数いるに違いない。うん、違いないのだ。
隠れてないで、たまには出てきてくださいね。

(論説委員:コロ田コロ夫)

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夢を買う、買わないという話


先月、バンド「黒夢」の商標権が公売で落札されたというニュースは、私の気持ちをいろんな意味でざわつかせた。
いや、黒夢、ちょっと好きだったんですよ。

バンド「黒夢」の商標権が公売で落札される 最高額は68万円、落札者は4件とも同一人物

9月26日13時、Yahoo!官公庁オークションに出品されていたロックバンド・黒夢の商標権4件が落札されました。落札額はいずれも見積金額を上回り、もっとも高額となったのは標準文字商標「黒夢」(称呼「クロユメ、コクム」)で68万1000円、入札は36件でした。

別に今更、ロックバンドの幻想とビジネスなどについて語りたいわけではない。
こっちもいい大人である。
いろいろな事情があったことは想像に難くない。

だがよりによって、「黒夢」と「Yahoo!官公庁オークション」というのは、言葉のギャップが激しすぎやしないか。なんというか、ポップ過ぎるのだ。特に「!」の部分が。

オークションにかけるにしても、古びた洋館の地下室などを会場にできなかったものか。
仮面を被った初老の外国人が、「ツギノ競売品ハ、コチラデゴザイマス!」とか言ってベールをはぐと、煙の中から「黒夢」の文字が現れ、タキシードを着た招待客たちが拍手喝采…。

それはさすがに、黒夢側に合わせ過ぎである。

もうひとつ気になるのは、落札価格が68万1000円だった、という点についてだ。
商標権4件すべてを買っても140万程度だった、ということを知って、「頑張れば、買えない値段じゃないな…」と思ったのは私だけではあるまい。

しかし、買ってどうしようというのだ。

仮に私が落札していたとしよう。
これで黒夢の名前は私のものである。
ニンジャム研究所で、大きく「黒夢」と書いた手ぬぐいでも作って売るか。

しかし、おそらく黒夢のファンはこの手ぬぐいを買わないだろう。
これを買っても黒夢サイドにはお金が入らないことを、ファンなら知っているからだ。
では、黒夢ファン以外になら売れるだろうか。
いや、売れない。
黒夢のファンではない人は、そもそも「黒夢」と書かれた手ぬぐいなど買わないからである。

ではいっそ、我々「ニンジャム研究所」が「黒夢」に改名してはどうか。
商標権はこちらにあるので問題ないはずだ。
我々が公式に黒夢を名乗れば、ニンジャムファンが黒夢ファンとなり、黒夢手ぬぐいも買ってくれるのではないか。

本末転倒である。
手ぬぐいを売るために黒夢になってどうする。
40過ぎていきなり黒夢になって、親兄弟にどう説明すればいいのだ。

やはり、商標権だけ買っても、ろくなことがないのだった。

このニュースがあって、久しぶりにカラオケで黒夢を歌ってみた。
ボーカル・清春さんのくせの強い歌い方は、やってみると難しい。
無理に真似たら、オットセイのようになった。


この個性こそが「黒夢」であって、商標権なんてどうでもいいんだってこと、本当はみんな知ってるんだ。

(論説委員:コロ田コロ夫)

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提言:クールジャパンの本当の意味を問う


以前、このコーナーで「提言:東京オリンピックを考える」というコラムを書いた。
そこで、開会式や閉会式に対する不安を、このように記した。

国というやつは、こういうところで「やらかしてしまう」ことがよくある。
芸者とお相撲さんとゆるキャラがいっしょに出てきてダンスなどやりだしたら、大変である。
そしてスクリーンに映しだされた初音ミクと安倍首相も踊りだし、満面の笑みで山本寛斎が登場・・・うわー、ありそう。

ご存じの方も多いと思うが、一ヶ月前に閉幕したリオ・オリンピックの閉会式、東京オリンピックのプレゼンテーションとして、実際にこれに近いことが行われた。

芸者の代わりに小池百合子、お相撲さんの代わりにキャプテン翼、ゆるキャラの代わりにキティちゃんとパックマンが出て、初音ミクの代わりにドラえもんとマリオが出てきた。安倍首相は土管から出てきた。
音楽監督は椎名林檎。山本寛斎と、名前の雰囲気はほぼ一緒だ。


ショー自体にケチを付けたいわけではない。
会場も盛り上がってたし。
ただこれを「クールジャパン」を推進してきた政府の手柄のように言う向きには、異を唱えたい。

経済産業省に「クール・ジャパン室」が開設されたのは2010年。
クールジャパンという言葉が使われ始めたのも、2000年代後半に入ってからだ。
今回のプレゼンで使われたキャラクター達はみな、そのはるか前から活躍している。
政府の助けなど借りず、むしろ「たかがマンガ」「たかがゲーム」などと、ちょっと蔑まれたりしながら、自力でのし上がってきたキャラクター達なのだ。

本当に「クールジャパン」推しで行きたいなら、すでに人気のあるキャラに乗っかるのではなく、2010年以降に生まれたキャラクターを使うべきではないか。
まだ若いキャラクターを、これから4年かけて世界にプレゼンし、育てていく。
それが成功したら、本当に「クール」なことだと思うのだが。

というわけで、日本オリンピック委員会の皆さん、ニンジャム研究所へのオファー、お待ちしております。

(論説委員:コロ田コロ夫)

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提言:ショービジネスに生き方を学ぶ


ここ数年、ハリウッドではアメコミ・ヒーロー物が人気だ。
「アイアンマン」「キャプテンアメリカ」「X-MEN」「マイティ・ソー」。
日本人にはもうひとつピンと来ないキャラクターばかりだが、どれも大ヒットしている。

さらにそれらが全部出てくる「アベンジャーズ」にいたっては、ヒーローが多すぎて、一体誰が何と戦っているのか分からないほどだ。
節操が無いとも言えるが、この大雑把な豪華さこそが現代的だとも言える。

日本も例外ではない。
「笑っていいとも」の最終回では、ダウンタウン・とんねるず・ウンナン・爆笑問題など、大物芸人が一同に介し、お茶の間の話題をさらった。
スタジオアルタの狭いステージ上に大物がひしめき合う豪華な絵面は、見るものを圧倒した。
もしハリウッドなら、すぐに「笑っていいとも最終回2」の制作が開始されることだろう。

大物だからといって、ツンとすましてはいられない。
協力しあって繋がって、より大きなビジネスに結びつける。
出し惜しみをしている場合ではないのだろう。

だが、そんな昨今のショービジネス界において、孤高を保つ存在がいる。
「くまのプーさん」だ。

群雄割拠のディズニーの中にあって、もう何十年も、他のキャラクターとの共演を拒み続けている。
ディズニーショップなどでも、プーさんだけは別コーナーにいる場合が多い。
にもかかわらず、Wikipediaによると、関連グッズの売上は10億ドルにのぼるという。
ハチミツが何百杯も食べられる金額である。

「スティッチも孤高だ」という声もあるかもしれないが、あれは、プーとは格が違う。
100円均一のショップでグッズを売ってたりして、ディズニーの扱いが雑だ。
声も悪い。
むしろミッキー側から共演NGが出ているのだろう。

同じ会社に所属するもの同士、仲良くやればいいのにと思う向きもあるかもしれない。
だが、SNSで誰もがゆるやかに繋がる時代にあって、このプーの「繋がらなさ」は、頼もしくも思える。
プーが「いいね!」と言うのは、ハチミツを見つけた時だけだ。
ミッキーが「こっちにおいでよ!」と、友だち申請をしても、プーの耳には届かない。
ハチミツの壺に頭がはまっていて聞こえないのだろう。

あらためて今、プーさんの生き方を見なおすべきなのではないか。
うん、見なおしてみよう。


・・・すげえバカだな、プー。

(論説委員:コロ田コロ夫)

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