先月、バンド「黒夢」の商標権が公売で落札されたというニュースは、私の気持ちをいろんな意味でざわつかせた。
いや、黒夢、ちょっと好きだったんですよ。
バンド「黒夢」の商標権が公売で落札される 最高額は68万円、落札者は4件とも同一人物
9月26日13時、Yahoo!官公庁オークションに出品されていたロックバンド・黒夢の商標権4件が落札されました。落札額はいずれも見積金額を上回り、もっとも高額となったのは標準文字商標「黒夢」(称呼「クロユメ、コクム」)で68万1000円、入札は36件でした。
別に今更、ロックバンドの幻想とビジネスなどについて語りたいわけではない。
こっちもいい大人である。
いろいろな事情があったことは想像に難くない。
だがよりによって、「黒夢」と「Yahoo!官公庁オークション」というのは、言葉のギャップが激しすぎやしないか。なんというか、ポップ過ぎるのだ。特に「!」の部分が。
オークションにかけるにしても、古びた洋館の地下室などを会場にできなかったものか。
仮面を被った初老の外国人が、「ツギノ競売品ハ、コチラデゴザイマス!」とか言ってベールをはぐと、煙の中から「黒夢」の文字が現れ、タキシードを着た招待客たちが拍手喝采…。
それはさすがに、黒夢側に合わせ過ぎである。
もうひとつ気になるのは、落札価格が68万1000円だった、という点についてだ。
商標権4件すべてを買っても140万程度だった、ということを知って、「頑張れば、買えない値段じゃないな…」と思ったのは私だけではあるまい。
しかし、買ってどうしようというのだ。
仮に私が落札していたとしよう。
これで黒夢の名前は私のものである。
ニンジャム研究所で、大きく「黒夢」と書いた手ぬぐいでも作って売るか。
しかし、おそらく黒夢のファンはこの手ぬぐいを買わないだろう。
これを買っても黒夢サイドにはお金が入らないことを、ファンなら知っているからだ。
では、黒夢ファン以外になら売れるだろうか。
いや、売れない。
黒夢のファンではない人は、そもそも「黒夢」と書かれた手ぬぐいなど買わないからである。
ではいっそ、我々「ニンジャム研究所」が「黒夢」に改名してはどうか。
商標権はこちらにあるので問題ないはずだ。
我々が公式に黒夢を名乗れば、ニンジャムファンが黒夢ファンとなり、黒夢手ぬぐいも買ってくれるのではないか。
本末転倒である。
手ぬぐいを売るために黒夢になってどうする。
40過ぎていきなり黒夢になって、親兄弟にどう説明すればいいのだ。
やはり、商標権だけ買っても、ろくなことがないのだった。
このニュースがあって、久しぶりにカラオケで黒夢を歌ってみた。
ボーカル・清春さんのくせの強い歌い方は、やってみると難しい。
無理に真似たら、オットセイのようになった。
この個性こそが「黒夢」であって、商標権なんてどうでもいいんだってこと、本当はみんな知ってるんだ。