提言: 命名は、あらゆる角度から検証を


近年、自分の子供に奇妙な当て字の名前を付ける親が増えているという。
いわゆる 「DQNネーム」 「キラキラネーム」 と呼ばれるものである。
まったく最近の若者は、と怒る向きもあるだろうが、これは何も今始まった話ではない。
明治の文豪、森鴎外には5人の子供がいる。
順番に名前を挙げてみよう。

於菟(おと)・茉莉(まり)・杏奴(あんぬ)・不律(ふりつ)・類(るい)

ここまで 「西洋人への憧れ」 をはっきり打ち出した人も珍しいのではないか。
ちなみに鴎外本人の本名は林太郎。
森林太郎である。
父親は木が大好きな人だったのだろう。

しかし鴎外の場合は、彼の生きた時代の背景や、残した功績の偉大さもあり、
子供の名前が少し不思議ちゃんだからといって、批判する人は見当たらない。
だが次のような例は、少々困ったことになる。

「ほっともっとフィールド神戸」

正式名称は神戸総合運動公園野球場だが、いわゆる命名権ビジネスというもので、ずいぶんポップな名前が付いてしまった。
この球場、数年前まではスカイマークスタジアム、その前はYahoo! BBスタジアムだった。
そして現在は「ほっともっとフィールド神戸」。
今から次が楽しみである。

「ほっともっと」は、日本最大のお弁当チェーン店だが、母体となる会社が「ほっかほっか亭」と商標権を巡って裁判沙汰になっていたのは記憶に新しい。
名前の大事さが重々分かっているのである。

wikipediaによると、新聞のスコアテーブルなどでは「ほっともっと神戸」「ほっと神戸」などの略称が用いられているという。
こうなると、野球を知らない人間にとっては、球場かどうかも分からない。
「次の休み、ホットコーベに行こうぜ!」
と言われても、何に誘われているのか見当がつかない。
聞き慣れない言葉の響きから、パスポートを用意してしまいそうだ。

命名権ビジネス抜きでも不思議な名前は多い。
例えばこれはどうか。

「日本ハムファイターズ」

たいていの日本人は 「日本ハム」 が会社名であることを知っており、
区切りを入れるなら 「日本ハム・ファイターズ」 になることが分かるだろう。
しかし外国人はどうか。
多くの場合 「日本・ハムファイターズ」 だと思うのではないか。

ハムファイターズってなんだ。
ハムを使って戦うのか、それともハムとハムが戦うのか。
あるいは 「ハムファイト」 という競技でもあるのか。
わざわざ 「日本」 と銘打っていることから、「アメリカ・ハムファイターズ」 や 「シンガポール・ハムファイターズ」 もあるのだろう。
おそらく、各国の力自慢がチームを作っており、国別対抗で熾烈なハムファイトを繰り広げるのだろう。
昔スタローンが伊藤ハムのお歳暮のCMに出ていたのも、アメリカチームの宣伝活動の一環だったのではないか。

やはり名前は大事だ。
その場のノリで適当な名前を付けると、後々困ったことになりかねない。
いったん決まってしまうと、なかなか引っ込みがつかないのだ。
名前を付ける時は、慎重に。
「コロクサ」 からの、切な願いである。

(論説委員:コロ田コロ夫)
   

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